読んだものメモ 2008年2月第3週

『失はれる物語』(角川文庫) 乙一著
東京出張の際に、本を持って行くのを忘れたので
仕方なく広島空港にて購入した文庫本。
8編の短編・中編から構成されています。
その中の一編「傷」は現在玉木宏さん、小池徹平さんが出演し
映画化(「KIDS」)されています。(年齢設定は原作と異なりますが)
四日間の出張中の移動時間で読了。
「Calling you」
一番気に入ったのは、最初に収録されているこの作品。
ベタだなぁ、と思いつつもしっかりベタ好きの心を刺激されました(笑)。
・・・うっかりビジネスマンで一杯の飛行機内で泣きそうになって
参りました。
頭の中の携帯電話に見知らぬ相手から電話が掛かってきて
会話をするようになり、やがて出会う・・・その結末があんな風になるなんて。
けれど、とても優しい物語だと思います。
全編通して、現実的ではない設定が盛り込まれています。
「失はれる物語」
事故に合い、右腕の触感以外の全ての感覚が失われた男性の物語。
・・・指一本でYes、Noを伝え、腕への触感だけで意思の疎通を辛うじて図り、
それでも生きていく・・・。
現実的にそんな風になったら生きていけないだろう、と思うけれど
それでも生きていることを納得させられてしまう文章に脱帽。
これだけの話にしてしまうところが、さすが乙一氏。
「傷」
他人の傷を自分の身体に移す能力を持った少年と
母親に見捨てられた少年の物語。
「神様が彼を選んで能力を授けたというのは、納得できるものがあった。」
という台詞には私も納得。
「手を握る泥棒の物語」
最後の女優(アイドル?)の得意げな笑みがいい。
「しあわせは子猫のかたち」
2番目に気に入ったのがこの話。
何だかんだで優しい物語が好きなのだなぁ、と思う。
不条理な話でもどこかに救いがあったり、
誰かが良い方向に変わるとほっとします。
姿の見えない幽霊との目に見えない戦い(?)が微笑ましいやら
可笑しいやらで楽しいです。
(そしてこの話の中でミニクーパーが出てきて思わず反応したり)
「ぼくの賢いパンツくん」
4頁にも満たない短編。
タイトル通りの話だけれど、それにしても変な話です。
「マリアの指」
これは寧ろ長編の方がいいのではないか?という気がします。
マリアの指をホルマリン漬にして机に隠し、
持っているうちに段々と身体が不調になってくる辺りは
もっと濃密に描けるのでは?と思うと残念。
設定が良いだけに、もっと長編で濃く書いて欲しかったです。
「ウソカノ」
こういう短編って大好きです。
嘘の彼女を作り上げて、どんどん設定は追加され会話もする。
でもちゃんと嘘だと分かっている。
ある日、同じようにウソカノを作っていた友人の嘘がばれるけれど
最後にちゃんと本物の彼女が出来たのが微笑ましかった。
・・・でも、主人公君には本物の彼女はいないままなんですよね(笑)。
全体的には乙一作品にしては、割と淡白な作品が多いと思います。
乙一作品は『夏と花火と私の死体』が初めて読んだ本だったのですが、
このデビュー作で衝撃を受けた人間にはちょっと物足りないかな・・・。
でも、やっぱり「Calling you」は好感が持てて好きです。
2008/02/21 23:58 | 読書 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0) TOP

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